雛菊の剣

Pを喰らった大鷹は殺気を身にまとって九郎目がけて飛んだ。身動きできぬ九郎。大鷹は体から触手を出そうとしたとき、目の前が真っ暗になって、地に落ちた。頭を振って立ち上がった大鷹の頭の羽毛がパンクに立ち上がった。猿のような男の方を向き、羽を大きく広げると、その体の色が美しいコバルトブルーに変わった。
「ぴーーーーーー！」
大鷹が男に向かって矢のように飛んだ。慌てて大砲を撃つ男。大鷹は飛んできた鉄球を両足でつかみ、男の顔にぶち当てる。男の頭は砕け散った。大鷹は笑みを浮かべて九郎の元へ飛び、九郎の腹へ飲み込まれていった。九郎の左腕が生え、開かれた左手にはPがのっていた。
「源！」
陽子が涙をポロポロ流しながら叫んだ。
「悪い、少し休ませてくれ」
九郎は寝息をたてはじめた。

小一時間眠った九郎がゆっくりと立ち上がり、ふらつきながら陽子と雛菊のところまで歩いてきた。
「雛菊を守ってくれて、ありがとう」
「大丈夫なの？」
「ああ。剣をくれ」
九郎は剣を受けとると、意識のない雛菊の小さな胸のふくらみの間に剣を置いた。
「本来いるべきところに戻れ」
九郎はじっと剣を見るが、何も起きない。
「なぜ、戻らない？戻れないのか？なぜなんだ…俺のせいか？いや、剣がその形にこだわるはずがない…。なぜだ！」
「どうしたの？」
「剣は雛菊へ戻り、雛菊が目を覚ますはずなんだ」
「剣が戻らないのね」
「ああ」
「源が剣とつながっているからじゃない？」
「あれは嘘だ。剣自身がお前の力をえて、雛菊を守っていたんだ」
「じゃあ…」
「分からないんだ。少し考えさせてくれ」
「とにかく、家に帰って休も」
「そうだな」

九郎たちが去った後の豊臣高校地下室。壁の一部が開き、三人の男女が出てきた。
「太閤、もう何も危険はありません」
「危険？私にとって危険なものなどありはしない」
太閤と呼ばれたスーツ姿の男が出てきた。190センチほどの身長を支える体はスーツの上からでも無駄のない筋肉に包まれているのが分かる。彫りが深く男らしいキレイな顔をしていて、ハーフかクォーターのようだ。

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