雛菊の剣

「剣を守る者か。飛燕やわれわれの影を倒したのは褒めてやっていもいいが、あの程度では私にとって危険といえるほどの者ではない。つまらない悪趣味な化け物だ」
太閤と呼ばれる男の言葉に、冷たい目をした男が意見を述べた。
「奴一人であれば太閤に危険は及びません。しかし、あの鳥たちがいます」
「焼き鳥にして食ってやるよ」
太った巨大な男がニヤニヤしながら言った。
「あのカラス三羽は手加減をして闘っていた」
「あの坊やとカラスたちって、それほど仲よさげじゃなかったわよ」
グラマラスな女が馬鹿にしたように言った。
「カラスたちが手加減したのは力を温存しておくためだ。何故だと思う」
不可解な顔をする二人。太閤はニヤニヤしながら話を聞いている。

「力を温存しておくべき相手、つまり俺たちがいたからだ」
「私たちに気がついてたって言うの？」
「そうだ。奴からの指示でカラスたちは手加減した。力は未知。ここにくるまでに奴と一緒に太閤の兵隊を全員殺したのだから侮れない。そしてあの小鳥」
「炎の威力は凄かったけど、炎を出す前に何か食べてたわ。あれを食べさせなければ恐れるに足らない」
「鷹とのキメラ化が気になる。奴とあの小鳥の間には深い関係があるはずだ。それと奴自身も底知れない」
「ぼこぼこにやられて酷い様だったぜ」
「奴はここに来る前にも闘っている」
「うちの雑魚どもか。俺だって、全員殺せるぜ」
「いや、この学校に来る前だ。かなりのダメージを受けていただろう」
「そういえば、悪魔ってなんだい？」
「残酷さや冷酷さのようなことではないようだった。奴は俺たちがいることを知っていた。真実だけを言ったわけではない。だが、確かに飛燕との闘い方は変わった。それが何なのかは私にも分からない」
「悪魔なんて外国のもの、俺たちには関係ない。怖かないね」
「外国のもの…考え違いしてたかもしれない。悪魔という言葉はその概念を表すものではなくて、何かのキーワードだったんだ。何だったんだ、一体」
「買いかぶりすぎよ。かなりのダメージを受けていたにせよ、飛燕にあんなにてこずるなんて。私だったら、傷つかずに飛燕を倒していたわ」
「それはお前が飛燕をよく知っているからだ。飛燕は強い。初めて会ったとき、お前は飛燕を倒せたと思うか？」
「倒してたわよ。あんなのに負けるわけないわ。あんたにだって負ける気がしない」
太閤が口を開いた。
「そこまでにしておけ。奴が強いのであれば、禍根を残さないように奴を始末するか、仲間にして飛燕の穴を埋めるかだ」
「あの坊やを仲間に!?いーわねえ。じゃあ、私がやるわ。役に立つ奴隷が欲しいと思っていたのよ」
「やめておけ。お前は奴をなめすぎている。これ以上手だれを失いたくない」
「あんたの言うことなんか聞かないわよ。なめることになるのはあの坊やのほう。ね～太閤～、いいでしょ～？」
「好きにしろ」
「やりぃ！あ～、あの坊やとやるのが楽しみだわ」

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